「鉄鋼材料の実務知識」の第4回「鋼材の損傷機構について」に示した「腐食」をさらに詳細に分類して解説する。
損傷 | 解説 |
デポジット腐食 | 金属表面上の不連続な堆積物の周りや下で起こる腐食。Poultice corrosionとも言う。すきま腐食と同じ機構で起こる。 |
堆積物下腐食 | |
付着物下腐食 | |
水線腐食 | 水と大気界面で腐食が顕著に現れる。海水中に鋼片を浸潰しておくと、液面は酸素量が多いのでカソードとなりそのすぐ下がアノードとなって腐食が起こる。腐食生成物がアノード部分に堆積すると酸素の拡散が抑えられ、ますますその部分が激しく腐食される。 |
合金の粒界腐食で安定化ステンレスが鋭敏化温度に加熱された後に溶接部に沿って起こる。 | |
迷走電流腐食 | 迷走電流とは、本来の電気回路を流れず、漏洩して他の導体中を流れる電流のことで、この電流に起因して生じる電解腐食を迷走電流腐食という。迷走電流が流れている場合、その環境には電位勾配が生じる。環境中に金属体が存在すると、電気的な電流回路は環境を流れる回路と金属体内を流れる回路の並列回路となり、迷走電流の一部は高電位部分で金属体に入り、低電位部分で環境に流出する。流出部では電気化学的なアノード反応が生じ、その部分に電解腐食を起こす。この現象は迷走電流腐食の中で'電食'と呼ばれる。 |
酸素濃淡電池腐食 | 含酸素および脱酸素の同一組成溶液中に同一表面積の2個の鉄試片を浸漬したモデル的酸素濃淡電池において、腐食のカソード反応が含酸素液中鉄試片で,アノード反応が脱酸素液中鉄試片で起こることになる。 |
溝状腐食 | 電縫鋼管の溶接部における溶接ボンド部の局部腐食。溶接ボンド部はフェライト組織、HAZは焼入れ組織かフェライト+パーライト組織をもち、これらは急冷されるために、ボンド部に、溶出しやすいS濃化部を持つMnSなどの非金属介在物が生成し、これから局部腐食が生じる。 |
粒界腐食 | 粒界層やその付近の領域で選択的に溶解し、粒そのものは通常ほとんど損傷しない。 |
線状腐食 | 大気腐食の一種で、塗装された普通鋼上でC.P.が塗膜を持ち上げつつ、糸状に進行する腐食である。最もpHの低い先端とV字とで囲まれたアノード(A)では下地からFeがFe2+として溶出し、さらに塗膜を透過してきたO2により、Fe3+へ酸化される。このときO2の還元反応が主に進行するカソードは先端左右にある。腐食生成物はまずpHが約2以上と高いCで生成しフィラメントの横広がりを抑えその幅を一定に保ちつつ、前線の進行につれて後方のフィラメント中央部にも詰まってゆく。後方ではC.P.からの脱水が起こり水酸化物の縮合が生じる。 |
層状腐食 | 表面に平行な面に沿った発生サイトから横広がりに進展する腐食で、一般的に粒界進展し、粒界にできた腐食生成物が金属母体を持ち上げ、層を呈して浮き上がる。アルミ合金は感受性が高い。 |
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木原重光