「鉄鋼材料の実務知識」の第4回「鋼材の損傷機構について」に示した「腐食」をさらに詳細に分類して解説する。
損傷 | 解説 |
剥離腐食 | Mgを3.5%以上含むアルミ合金は強度の冷間加工を行うと粒界やすべり線上にβ相が析出し、これが選択的に溶解し、層状に引き伸ばされた結晶粒が燐片状に剥離(剥離腐食)することがある。剥離腐食は冷間加工を50%以内に抑える、安定化処理を130℃付近で行いその後高温にしない、ことによって防止できる。 |
脱成分腐食は選択腐食形態で、合金中の一つ以上の成分が優先的に溶解し、密度の低い多孔質の材料が残ってしまう現象である。 | |
変色皮膜破壊 | 変色皮膜破壊は皮膜のみが機械的に割れる。すなわち金属自体は直接割れず、いったん酸化物の形を変えてから割れる応力腐食亀裂進展機構であって、変色皮膜を持つ黄銅の応力腐食割れが代表的な変色皮膜破壊である。 |
応力腐食 | 応力下で腐食が加速される現象。 |
黒鉛化腐食 | 鋳鉄は母相の鉄に黒鉛が埋め込まれて構成されている。黒鉛化腐食は鉄の母相が腐食される脱成分腐食で、腐食生成物と多孔質の黒鉛が残る。多孔質の構造が残るという損傷の結果、強度、延性、密度が低下することになる。通常は低pH、流動性のない状況で生ずるが、特に土壌や湿潤硫化物環境に接しているときに起こりやすい。 |
蟻の巣状腐食 | 酢酸やギ酸などの有機酸の環境で、蟻の巣に似た断面を持つ腐食を起こす。被覆導管の保温材の分解生成有機酸により発生した事例もある。空中に有機酸が漂う環境で銅管外面をむき出して使用してはならない。 |
凝縮腐食 | 湿分に影響する因子として湿度・温度・温度変化に加え、凝縮促進物質としての塩分、亜硫酸ガス、表面付着物、腐食生成物などがある。このうち、塩分やガス類は化学反応、pH、電導度、腐食生成物の保護性などにも影響し、一般に環境の腐食性を高める。 |
Down-Time Corrosion(訳:停止時腐食) | ボイラの停止時に伝熱管の管内(水側)と管外(燃焼ガス側)に発生する腐食。管内(水側):ボイラ開放時に管内に入る空気(酸素)による孔食の発生。管外(燃焼ガス側):硫黄分が多く含まれている燃料を燃焼している場合は、形成された硫黄化合物の分解、凝縮による硫酸腐食。 |
冷却水腐食 | 水冷却の熱交換器や冷水塔などで起こる全面または局部腐食。ファウリングと関係して起こる(あるいは同義語として使われる)。水の種類、含有されている塩、ガス、無機化合物、微生物、温度、流速などに影響される。 |
ボイラ水凝縮腐食 | ボイラの給水およびコンデンサーシステムで起こる全面または孔食。溶存するガス、O2,CO2の濃縮、給水処理、温度、pHに影響される。 |
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木原重光