鉄鋼材料は、鉄鉱石の精錬から生まれ、各種工程を経て、板、棒、管などの形で、メーカーから供給されます。鋼材を使用する側は、規格名を媒体にして、メーカーから鋼材を購入し加工して製品を作ることになります。この鋼材購入から製品の完成までには、種々の工程があり、全ての工程に鋼材情報を正しく伝える必要があります。
多くの方は、鋼材規格名を決めれば、世界中どこから購入しても同一品質の鋼材が入手できて、何も難しいことはないとお考えかもしれません。しかし、実際はそう簡単ではなく、鋼材によるトラブルを経験されている方も多数おられると推察いたします。
ここでは、選定から調達における注意すべき考え方の一例を述べます。MatGuideを有効に活用していただくための参考としていただければと思います。
同一規格は同一品質ではない
鋼材規格には、化学組成、強度などの鋼材が具備すべき条件が示されています。しかし、数値には幅があります。通常はその幅に入っていれば、ほぼ同一の特性を示すと考えてよいわけですが、中にはその幅によって鋼材の品質が大きく異なる場合があり、注意が必要です。
最も分かり易い例が、鋼材中のS量です。Sは、鋼材の靭性(粘り強さ)や溶接性を阻害する元素です。JIS鉄鋼の多くは、S量の上限を0.035%前後としています。しかし、現状国内メーカーが製造している鋼材のS量は、ほとんど0.01%以下になっています。しかし、規格では、多くの場合、0.035%まで許容されますので、規格通り注文すれば、0.035%に近いS量の鋼材が入ってきて問題を起こすことが多々あります。海外から鋼材を購入する場合、必要な靭性、溶接性などを十分考慮して、特別にS量の上限を設けて注文することが必要です。
また、海外規格では、S量上限値を低くしているものもあり、必要なら、そのような高品質規格材を選ぶべきです。
一方、Sは鋼材の切削性をよくする効果を持っています。現状、S量が高めの炭素鋼を切削して使用しているときに、調達先を変えたら、S量の低い鋼材が入ってきて、切削性が悪く問題になったケースなどもあります。切削性が重要な場合、快削鋼(SUM材)という規格があり、これを選定、調達することが望ましいと考えます。
上述のように、鋼材の選定・調達には、ユーザーとメーカー間の緊密な意思疎通が必要です。当サイトは、その仲介をする場となりたいと考え、選定・調達についてアドバイスしています。海外調達では、国内のように意思疎通がうまくいかないことが多く、問題が多発しています。当サイトでは、特に中国での鋼材調達に失敗しないためのプログラムを用意しています。
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木原重光