金属材料は高温で拡散によって原子が移動し、組織変化が起こる。通常、材料は初期使用状態において、最適の特性を示すように熱処理などによって調整されている。従って、使用中の材料特性の変化は、特性の低下(劣化)となる。材料特性の低下後は、それまでの使用条件でも破損が起きることがある。
材料特性劣化は、強度、靭性および耐食性の低下である。材料特性劣化は材料固有の現象で、発生条件が限定されており、材料および使用条件の選定によってほとんど回避が可能である。
下表に代表的材料特性劣化の条件と回避方法を示す。
対象材料 | 劣化条件 | 回避方法 | ||
焼戻し脆化 | 低合金鋼 | 脆化 | 350-600℃で長時間加熱(対策されていない古い鋼材のみ) | 母材および溶接材料中のMn、Si、P、Sn、SbおよびAsの量を限定する。 |
475℃脆化 | Cr量12%以上のフェライト、マルテンサイトおよび二相ステンレス鋼 | 脆化 (硬さ上昇) |
320-540℃での長時間加熱(475℃付近では短時間で発生する) | 対象材料をこの温度範囲で使用しない。 |
σ相脆化 | 高Cr鋼 | 脆化 (常温) |
700℃付近での長時間加熱(材料によって温度域が異なる) | 高温では延性、靭性は維持され、常温のみでの脆化であるので、σ相析出材に常温で高負荷を与えない。 |
液体金属脆化 | ほとんどの金属材料 | 脆化 | 亜鉛、水銀、カドミウム、鉛などの溶融金属との接触 | 液体金属との接触を避ける以外方法はない。 |
黒鉛化 | 炭素鋼 0.5Mo鋼 |
強度低下 | 430-590℃での長時間加熱(1%Cr以上の鋼では発生しない) | 強度部材としては、炭素鋼および0.5Mo鋼の430℃以上での長時間使用を避ける。 |
水素侵食(水素アタック) | 炭素鋼 低合金鋼 |
割れ 膨れ |
高温高圧水素中で長時間使用 | 材料別、水素アタック発生条件(温度、水素分圧)を示すネルソン曲線を用いて、発生限界以下の条件で材料を使用する。 |
s-kihara(at)b-mat.co.jp【(at) を @ に替えて下さい。】
(株)ベストマテリア
木原重光