「鉄鋼材料の実務知識」の第4回「鋼材の損傷機構について」に示した「腐食」をさらに詳細に分類して解説する。
損傷 | 解説 |
無機酸腐食 | 湿食は流体成分によって特徴付けられ、特に無機酸によるものを無機酸腐食と呼んでいる。 |
有機酸腐食 | 湿食は流体成分によって特徴付けられ、特に有機酸によるものを有機酸腐食と呼んでいる。 |
塩酸腐食 | 塩酸(水性HCl)は全面腐食、局部腐食を引き起こし、広い濃度範囲でほとんどの建築材料に腐食を与える。製油所における損傷は、大部分が露点腐食と考えられ、蒸留塔オーバーヘッド系、精留塔またはストリッピング塔からの水蒸気や塩化水素が濃縮する。初めに濃縮する水滴は、強酸性で腐食速度が速い。 |
屋内プールのドアや天井において気相結露中に塩化物イオンが存在している。これは、プールの滅菌処理に、次亜塩素酸ナトリウムや塩素を用いているためである。いずれも、次亜塩素酸イオンを生じ(塩素の場合は次亜塩素酸が生成)、この酸化力によって腐食電位が貴化し、これに加え液膜が薄いため溶存酸素量が高くなり、かつ、乾湿繰り返し作用があいまって腐食性が高くなっている。 | |
硫酸腐食 | 硫酸は炭素鋼やその他の合金で全面腐食・局部腐食をもたらす。炭素鋼の熱影響部で著しく腐食することが見られる。 |
リン酸腐食 | リン酸は重合装置で触媒として多用される。水含有量にもよるが炭素鋼の局部腐食、孔食を引き起こす。 |
硝酸腐食 | 硝酸は全濃度範囲において酸化性を有する強酸である。そのため、ステンレス鋼は共沸濃度(68%)以下の濃度であれば、3価のCrを主体とした安定な不動態皮膜を形成する。しかし、硝酸濃度や温度が上がると、系の酸化力が上昇し過不動態域に入るため、不動態皮膜の3価クロムが6価クロムに酸化されて溶出することにより、急激に腐食が大きくなる。高温での硝酸環境ではステンレス鋼は粒界腐食を呈する。 |
主に、常圧蒸留装置や減圧蒸留装置やこれらの装置の下流装置で起こるナフテン酸を含む蒸留成分やカット成分による高温腐食形態。 | |
フッ酸による腐食でとても腐食速度の速い全面腐食と局部腐食を呈する。さらに、水素割れ、ブリスター、HIC、SOHICを伴う。 | |
アミン腐食は原則としてアミン処理過程における炭素鋼で発生する全面・局部減肉である。腐食はアミン自身が原因となるわけではないが、酸性ガス(CO2、H2S)、アミン劣化物、熱安定アミン塩(HSAS)やその他の不純物によって発生するものである。 | |
炭酸腐食は水にCO2が溶解して炭酸(H2CO3)を形成することによる腐食。酸はpHを低下せしめ、炭酸量が十分あれば、全面腐食・孔食を起こす。 |
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(株)ベストマテリア
木原重光