「鉄鋼材料の実務知識」の第4回「鋼材の損傷機構について」に示した「腐食」をさらに詳細に分類して解説する。
損傷 | 解説 |
ほう酸腐食 | 水環境において水に添加しているほう酸が濃縮して水が酸性になって生じる腐食である。金属が溶けたように腐食するという特徴がある。また、発生箇所はほう酸が濃縮される箇所に限られる。 |
サワーウオーター腐食(酸) | pHが4.5〜7.0でH2Sを含有している酸性サワーウォーターにより鋼が腐食される。通常、二酸化炭素も存在する。アンモニア、塩化物、シアン化物が多く存在するサワー環境はpHに影響し、異なる現象となる。 |
亜硫酸アンモニウム腐食(アルカリサワーウオーター) | 水素プロセス廃液システムで起こる局部腐食。NH4HS濃度、pH,流速、温度、乱流に影響される。 |
アルカリ腐食 | 苛性アルカリ性塩の濃縮による局部腐食。通常は、気化状態または高い熱伝達状態で起こる。アルカリまたは苛性濃度によっては、全面腐食も同発する場合がある。 |
苛性ガウジング | |
キレート腐食 | NH4+はFe2+をキレート化合物として、Fe2+の活量を減らすのでFeの腐食傾向を促進する。 |
湿性硫化物腐食 | 鋼が露点以下の硫化水素と反応してFeSを生じる腐食。腐食形態は一般に全面腐食であるが、腐食生成物中に塩化物などが濃縮すれば局部腐食を生じる。高強度材はこの腐食で吸収される水素により、溶接部の割れ(硫化物応力腐食割れ)を、軟質鋼では膨れまたは水素誘起割れを生じる。 |
湿性塩化物腐食 | 原油中に含まれる塩化物NaCl、MgCl2による鋼の腐食。常圧蒸留装置のデソルター系等で生じる。蒸留塔塔頂部付近及び塔頂系配管、熱交換器などで、凝縮した水分に塩化物が加水分解することにより生成するH2SとHClが集積し、発生する酸腐食。 |
塩化アンモニウム腐食 | しばしば遊離水の無いところで見られ、塩化アンモニウムやアミン塩付着物の存在下で起こる、全面腐食と局部腐食形態をしめすが、時には孔食を示す。 |
水素化プロセスでの反応塔エフエルエント系やアルカリサワー環境の装置で起こる激しい腐食。過去のいくつかの大きな破壊は水素化プロセスでの反応塔エフエルエント系における局部腐食として発生する。 | |
アンモニアアタック | 腐食環境(酸素、アンモニアの侵入)において銅合金の銅成分が溶出して生じる腐食である。復水器において銅合金が用いられている場合に、空気注入部においてアンモニアが凝縮して生じる腐食が典型である(アルカリ腐食)。水質(pH)調整に使用しているアンモニアを加え、酸素除去のために注入しているヒドラジンが分解してアンモニアが発生し、これらのアンモニアが凝縮水に溶け込んで過剰になった部分で、銅合金が錯塩となって腐食する現象であり、配管と保持板の境界部で生じることが多い。 |
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木原重光